羊の目

昨日、両国へ出かけたその足で浅草周辺を歩いた。
以前から通勤に使う革靴を欲しいと思っていた。
浅草に靴の問屋街があり、出かけて見たかったところだ。


途中、本所と呼ばれる街を通り抜け、隅田川沿いに出た。
ちょうど首都高6号線の真下になるところだ。
陽気のいい時期なら気持ちよく感じる場所と思われるが、冬空に浮浪者のテント暮しの風景を見ると、
寒さが余計に身に堪えてしまう。


欄干が赤く塗られた吾妻橋を渡る。
水上バスの発着場所があり、橋のうえから川を覗いている人がたくさんいる。
東武浅草駅周辺の花川戸という地区に靴問屋街がある。
本所、花川戸と言う地名から思い出したことがある。


昨年夏に読んだ伊集院静の小説、”羊の目”の舞台だった場所。
あの小説は一言で語れない重さが今でも心に残っている。
昭和初期、”侠客”といわれる職業の親に育てられた男の一生の物語。
そんな物語が実際にいくつもあったかもしれない街並み。
ただ昨日は正月の喧騒にかき消されていた。
数年後、再度読み返してみたい小説である。


羊の目

羊の目


そんな事を一人考えながら、浅草寺にお詣りをしてきた。
初詣客で仲見世から人がごった返している。
並んでから参拝まで30分はかかったかもしれない。
今年二回目の初詣となったが、わずかな賽銭を投げ、今年の無事を願った。