青蓮院門跡 その3


写経しようみようか?とふと思い立った。
”でも・・・”と思う気持ちもある。
しかし、ここに来たのも何かの縁、次回ここに来るのはいつなのか、想像できない。
係りの人に聞いたら、ここで受付するということで、般若心経をお願いすることにした。
書き上げるのに60分弱かかったかもしれない。
行儀は悪いが、正座ができなかったので、最初から足を崩した。
暗くて、筆を持つ右手の影が半紙に映る。
字が細かく、よく見えないので、メガネを外して、半紙を顔に近づける。
他人から見ればなんとヒドイ格好で写経をしたのかと思われたかもしれない。



書き終わったとき、係りのオバサンが言葉を発した。

”よくぞ最後までお書きくださいました”

最初、”何?(言っているの)”と一瞬思った。
お寺さんで写経した人にする儀礼的な言葉なのだろうか。
しかし、後でその言葉の意味を噛みしめ考えてみると、ありがたいお言葉なのかもしれない。
写経をお不動様に納めて、その時間が終了した。


写経が終わり、お寺のお庭を一周。
それまで思っていた観光客の多さとか一種のモヤモヤが心の中から吹っ飛んだ。
ひとつのお寺に長居をした形となったが、充実した時間を過ごすことができた。
言葉で言うと、”満喫”という言葉がピッタリ。
自分と青蓮院門跡の間で、縁を結ぶことができたのかもしれない。
忘れえぬ思い出となるかもしれないひと時だった。